小林モー子さんの「メダイユ」

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crochet de luneville(クロッシェ・ド ・リュネビル)というフランスのオートクチュール刺繍の技術を使い、ビンテージのビーズアクセサリーを作るMôko Kobayashi小林モー子さん。動物や身近な日用品、短い言葉をモチーフにして、非常にユニークな作品を高い技術で作り続けている。

小林さんが見せてくれたのは、小さな小さなアルミのプレートだった。1センチ前後の小さなもので、楕円形のものが多く、十字架やマリア様、聖書のシーンなどが描かれている。正式な名称はわからないが「メダイユ」と呼ばれるものだろうか。特にキリスト教信者でもないという小林さんが、なぜ集め始めたのだろう。

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「うちはクリスチャンではないのですが、母のお友だちにシスターの方がいて、年に一回実家に遊びに来ていたんです。小さな頃にシスターの格好をしている人なんてあまり身近ではなかったので、すごくインパクトが強くて“神様”みたいな気分で接していました。その方が家に来るたびにひとつずつくれたのが、このプレートだったんです。神様からもらったものですから、幼心にすごい宝石だと思って、大切に箱にしまっていました。しばらくそのままになっていて、20歳を過ぎてパリに留学する直前に実家に帰った時、ふと思い出して箱を開けてみたんですね。そうしたらただのアルミのプレートだった(笑)。でも、なんだかうれしくて、それから1年間くらいは身につけたりしていましたね。パリに留学していた時に教会で同じようなものを見つけたんですが、30サンチーム(当時で30円くらい)くらいのものだったんです。確かに価格は安いものですが、毎年神様からもらう小さくて特別な宝石でした。これが人生最初のアクセサリーです」

幼心にわくわくしていた、小さくてキラキラした宝石。毎年、その小さな宝石を手にするシチュエーションも含めて、小林さんにとって特別な体験であったに違いない。

作品。アンティークのビーズは一粒一粒、布に絵を描くように手で縫い付けられる。
作品。アンティークのビーズは一粒一粒、布に絵を描くように手で縫い付けられる。
アトリエ。静かな住宅街の一角にあるパリのアパルトマンのような雰囲気。
アトリエ。静かな住宅街の一角にあるパリのアパルトマンのような雰囲気。

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