ジュエリーをはじめて手にしたのは、いつだったのだろう。
それは宝石と呼べるものではないかもしれない。
だが、小さくキラキラした大切なものをはじめて手にしたとき、
きっと心躍ったに違いない。
JEWELRY JOURNALに参加するデザイナーたちが、
はじめて手にしたジュエリー、のお話。
初めてジュエリーを意識したブローチピン
《jaren(ヤーレン)》の佐々木史恵さんは、もともとアクセサリーやジュエリーをファッションの一部として着用するようなタイプではなかったそう。
大学では工芸を専攻し、彫金や鍛金のどちらかというと“男っぽい”技術を極めていくことに楽しみを見いだしていた。このブローチピンに出合ったのは、ベルギーのギャラリーだったという。
「コンテンポラリー・ジュエリーに興味を持ったのは、ジュエリーの専門学校に就職してから。いわゆる宝飾のようなキラキラした世界は好きじゃなかったんですが、コンテンポラリー・ジュエリーというのはもっとアートに近いというか。アート作品なんですが身に付けられるものなので、もっと生活に寄り添っている身近な印象があったのです。そして就職してしばらく経ってジュエリーを作り始めた時に、ベルギーのギャラリーオーナーの方が気に入ってくれて。その時にオーナーの方からいただいたのが、このブローチピンだったのです。このギャラリーは、ジュエリーだけを扱っているのではなくB&Bを併設していたりして、生活の中にアートが自然に溶け込んでいて、すごく素敵な空間。そこで自分のジュエリーを取り扱ってもらえるなんて、すごくうれしかったです」
ベルギーの古い2フラン硬貨の肖像部分が見事にくりぬかれたブローチは、これはジュエリーなの? アート作品なの? という認識を揺るがされる。これを見せてもらった時に、佐々木さんは、生活に馴染んでいくような作品を作りたい、と心に留めたのだという。
アトリエの壁面には、さまざまな作品が掲示されている。
佐々木さんの生活にもアートが溶け込んでいるようだ。
アトリエの作業デスクの下には、パーツがキレイに分類されてある。
非常に緻密なステンレスメッシュにペイントしたジュエリー等、
大学時代に学んだ工芸の知識や技術を使うジュエリーが特徴。
《jaren(ヤーレン)》のジュエリー。デザインの発想は素材から。
デザイン画などは描かず、素材を触りながらだんだん形が決まってくるのだそう。
グラフィカルなジュエリー、プロダクトと工芸とジュエリーの境界を行ったり来たりするような作品だ。
jarenというブランド名は、オランダ留学に通っていたカフェの名前から拝借した。