【連載】basic knowledge of Jewelry vol.6 – Pearl / 真珠

今回の基礎知識は、最もポピュラーな宝石の1つである真珠についてです。「真珠は貝から採れる自然の宝石。」ということは皆さんもご存知かと思います。上品で自然な輝きと存在感を持ち、6月の誕生石としても知られています。歴史も古く何千年も前から世界中で愛され、日本でも紀元前1400年頃の縄文時代の遺跡から、糸を通したと思われる穴の空いた淡水パールが出土しているそうです。

古くから世界中で珍重されてきた真珠ですが、産地や色などを含めその種類と特徴は様々。今回の基礎知識では、真珠の種類とその違い、そして保管や手入れ法についてお話ししたいと思います。

 

【真珠が出来るまで】

種類についての説明の前に、真珠がどのように出来るのか?をざっと紹介します。
天然真珠の場合、外套膜の細胞が何らかのきっかけで貝の体内に真珠袋を形成し、その中に真珠質が分泌されて出来上がったものです。カリブ海 やメキシコ湾一帯に生息する「ピンク貝」という巻貝から採れる「コンク真珠」を始め、天然真珠には様々な種類がありますが希少性が高く、現在流通している真珠はほぼ養殖真珠です。真珠の養殖は高い技術と多くの人の手で成り立っており、その労力により現在私達が目にするような品質の高い真珠があるのです。養殖真珠では貝殻を丸く削った「核」と「ピース」を貝に埋込む作業を人の手で行います。そして真珠は母貝や育つ環境によって様々な種類があります。続いてその種類についてお話しします。

 

【淡水パール】

真珠は大きく分けて、海水で生息する貝から採取されるものと、湖などの淡水で生息する貝から採取されるものがあります。淡水パールは文字通り海以外の場所、淡水の湖や川で育った真珠です。母貝は日本では主に「イケチョウガイ」、中国では「ヒレイケチョウガイ」を使います。一般的には「核」が無いと言われていますが、ピースの形を工夫することで、下記のように色々な形の真珠が生まれます。

・ラウンド・セミラウンド ——– 真円に近い形のもの
・ポテト ——– 少し潰れたもの
・ボタン ——– 底が平たく、上は丸い形状のもの
・バロック ——– 不定形な形

淡水パールというと、少し安価なイメージのある方もいらっしゃるかと思いますが、中にはラウンドに限りなく近く、とても美しい輝きのものもあります。そのような品質のものは希少で、淡水パールとはいえ値段も上がります。

 

【アコヤ真珠】

日本で最も一般的と言える真珠です。主に日本で養殖されている「アコヤ貝」を母貝にとした真珠で、微妙な光沢が魅力の真珠です。直径5~7mmの真珠が中心で、9mmを超える大きさのものは希少です。

 

【白蝶真珠】

養殖真珠の母貝としては最大の「白蝶貝」から採れる真珠。主に直径10mmを超える大粒の真珠です。白蝶真珠はオーストラリア・インドネシア・フィリピンなどで養殖されます。真円はもちろん、ドロップ形などの形もあります。シルバー系の他に、ゴールド系の白蝶真珠も人気があります。

 

【黒蝶真珠】

「黒蝶貝」から採れる真珠で、主にタヒチ近海で養殖されています。「ピーコックグリーン」と呼ばれる美しい鮮やかな青緑のものは価値が高いとされています。また、特にタヒチ産のものは「タヒチパール」または「タヒチアンパール」とも言われています。

 

【半形真珠】

母貝の代表的なものは「マベ貝」です。半形真珠の養殖方法は真円真珠の場合と異なり、半円形の核を貝殻の内面に密着させて養殖します。アコヤ貝や他の貝とは異なり、貝が植え付けた核を排出してしまうため、貝殻に密着させる必要があるそうです。そのため、貝殻に接する部分が平らになり、半円形の真珠が出来上がります。「マベパール」という名称でも知られています。

*因みに、白蝶真珠・黒蝶真珠共に「南洋真珠」または「南洋白蝶真珠」「南洋黒蝶真珠」と呼ぶ事もあります。

 

【コンク真珠】

冒頭でも触れましたが、カリブ海やメキシコ湾一帯に生息する「ピンク貝」という巻貝から採れる天然の真珠です。真珠の表面に現れる独特の「火炎模様」が特徴で、大変希少価値の高い真珠です。今まで紹介してきた貝は全て2枚貝なので、核を植えて真珠を養殖することが可能ですが、コンク真珠の母貝であるピンク貝は巻貝であるため、核を植え付けることができません。そのためコンク真珠の養殖は存在せず、天然のものしか採取できないのです。

続いて、真珠の品質を左右する要素についてです。

 

【色について】

真珠の色は一般的には「白」というイメージかと思います。(真珠表面の結晶の層状構造により干渉光が反射しているため、虹のような多色の色彩の効果と独特の光沢がありますが)実際はその色味に様々なニュアンスがあり、アコヤ真珠の色は主に、以下の色味が存在します。
・ピンク、ホワイト、ゴールド、クリーム、グリーン系 など。
その他、先ほど紹介した白蝶真珠や黒蝶真珠に見られる、シルバー系、ゴールド系などがあります。

 

【巻き】

巻きとは真珠層の厚さのことを指します。厚いものほど良質とされ、耐久性の面からも重要な要素です。

 

【光沢について】

光沢の良し悪しは、真珠表面のなめらかさ、真珠層の結晶の厚さや均一性などで決まります。光沢の深みは巻きとも密接な関係があり、一般に巻きが厚いものほど光沢に深みがあるとされています。

 

【キズ】

真珠には養殖期間中に自然にできるキズがあります。表面がなめらかでキズが少ないほど価値は高くなりますが、キズの全くないものは殆どありません。

 

【形】

真円(ラウンド)に近いほど良いとされます。通常の評価基準とは別に、ユニークな形のバロック(不定形のもの)や緩やかな曲線のドロップ形(しずく形)など個性的な真珠にも魅力があります。

最後に、真珠の取り扱いについてです。

 

【真珠の取り扱い】

①真珠は熱や紫外線の影響で、色や光沢にダメージを受け品質が劣化する場合があります。日光の当たる場所・高温多湿な場所・極端に乾燥する場所では保管しないほうが良いでしょう。
②真珠は比較的割れにくい宝石ですが、他の宝石類と比べると硬度が低いので保管の際は、他の宝石や金属などと触れ合わないよう注意が必要です。
③有機質の宝石は化学物質(洗剤・化粧品など)により表面が溶解し、変色することがあります。また汗やほこり、水分などが付いたままにしておくことも変色の原因となります。使用後は柔らかい布で拭くようにすると良いと思います。

 

【冠婚葬祭での真珠】

真珠のジュエリーを身に着ける機会として、まず頭に浮かぶのが冠婚葬祭のようなフォーマルな場面かと思います。結婚式などのお祝いの席では、「アコヤ真珠」「白蝶真珠」は勿論、弔事のものと思われがちな「黒蝶真珠」もアコヤ真珠とはまた違った魅力があり、おしゃれでデザインの優れたものを最近良く見かけます。ダイヤ等のジュエリーとの相性も良く、華やかな装いにももちろん合わせられます。また、「月の涙」と言われる真珠は、悲しみの席でも身に付けることが許されているそうです。その際はネックレスは1連のもの、指輪やイヤリングは白い地金で、ダイヤなどが付いてないものを選ぶと良いそうです。

如何でしたでしょうか? 日常からフォーマルまで、どのような場面でも活躍してくれる真珠のジュエリー・アクセサリー。そして身に着ける人も選ばない稀な宝石だと思います。

今回の記事は「株式会社ミキモト」様より資料等の多大なご協力を得て執筆しました。80年ほど前にMIKIMOTOを創業した御木本幸吉氏が、エジソンの自宅で自身の養殖した真珠を見せると、エジソンから感嘆の声が上がったそうです。真珠の歴史を紐解くとクレオパトラに始まり、コロンブス、マルコ・ポーロ、ココ・シャネル、グレース・ケリーなど、そうそうたる名前が出てきます。現代の私たちも彼らと同様に、その魅力に魅せられ続けています。今回の基礎知識が、今後皆さんが真珠を選ぶ際の予備知識となれば幸いです。

*今回の記事は「株式会社ミキモト」様よりご協力を頂いておりますが、全ての文章ではありません。
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