【連載】basic knowledge of Jewelry vol.5 – チェーンの種類

ジュエリーの基礎知識。今回は少し地味?マニアック?なチェーンの種類についてです。ネックレス・ブレスレットなどのデザインを左右する要素でもあり、形状によりそれぞれ名称があります。また、歴史的に見てもかなり古くから出現している装飾品と言われており、中世の肖像画などでも男性・女性問わず身につけている様子が見られます。当時のチェーンは金属環を1つ1つ繋げ、人の手によって編み上げられたものが使用されています。現在のジュエリーに使用されているチェーンは、機械で編み上げられた工業製品ですが、その種類は10,000種を超えるほど無数にあります。ここではよく使われているチェーンの種類をご紹介します。

 

アズキ / cable chain

丸環を連続して繋いだもの。チェーンの中で最も一般的なタイプの形状です。環の正面と側面が交互に見え、環が楕円になっているものや、フラットに潰したものなど、多くの種類があります。繋ぎ目に空間があるので、動きも自在で見た目も軽やかです。

 

きへい / curb chain

アズキチェーンのように環をつないだ後、ねじって全てを同じ向きにしたもの。チェーンのコマ全てが同じ方向を向いているので、詰まってボリュームがあるように見えます。また、表面が平らに削られたものは、カットが施されてるかのように華やかで存在感があるため、トップなどをつけずにチェーンのみで身に着けることも多いデザインです。英名の「curb」は馬具の“くつわ”からきています。喜平とも表記します。

 

スネーク / snake chain

画像または図を見てわかるように、見た目が蛇のように見えることから、その名前がついています。打ち抜いたパーツをカシメて繋いでいます。密度があり、独特のしなやかな動きで存在感のあるチェーン。形状も丸や楕円など様々です。

 

ベネチアン / venetian chain

四角い囲いのような形状を繋いだチェーン、日本ではベネチアンと呼ぶことが多いように感じますが、海外では「box chain」「square link chain」などとも呼ばれています。構造的にしっかりしており、動きもスムーズです。スネーク同様、密度があるので細くても豪華に見えます。

 

フォックステイル / foxtail chain

このチェーンも、その見た目が「狐の尾」に似ていることから名付けられています。歴史も古く、その起源は何百年も前に遡ります。勿論その当時は手作りで、イタリアの中心地などの職人達の熟練した技術により作られていました。形状は中心に向かってV字に編まれています。密度があり、重量感のあるチェーンです。

 

ボール / ball chain

ジュエリー以外でも目にすることの多いチェーンです。金物やキーホルダーなどのストラップとしても良く使用されています。構造は板材を球の形に成形したものと、棒状のパーツをカシメで組み合わせています。「bead chain」や「pelline chain」とも呼ぶようです。またカットの入ったものはカットボールチェーンと呼びます。ボールチェーン以外でもカットの入ったチェーンは多数あり、同じデザインでもキラキラして見えるので、華やかな印象になります。

*実際はここまで細くカットは入っていません。

 

ロープ / rope chain

2-3個の環を編んで螺旋状にしたチェーン。色の異なる金属の環を編み込んだものもあり、バリエーションも豊富なチェーンです。下の写真の右側は「french rope chain」。

 

フィガロ / figaro chain

アズキと基本は変わりませんが、長い環と短い環を組み合わせリピートすることでリズムをつけたチェーンです。1:1や1:3などが一般的です。見た目に華やかなチェーンです。イタリアで生まれ、有名なオペラ「Marriage of Figaro/フィガロの結婚」から来ていると言われています。

ざっと紹介しただけでもこんなに沢山の種類があり、さらに環の形状や環の断面の形でチェーンに微妙なニュアンスが加わり、その種類が 10,000以上というのも頷けます。私も自身で制作する際に数種類のチェーンを購入し、簿妙な細さや目のつまり具合を吟味します。悩ましくもあり、楽しい工程でもあります。

最後に、このチェーンを使って素敵なネックレスを作っていらっしゃる、ベルリン在住のジュエリーアーティスト「Naoko Ogawa」さんをご紹介したいと思います。 チェーンをモチーフにデザインされている方やブランドは沢山あるのですが、Ogawaさんは今回紹介したようなスタンダードなチェーンをそのまま使用しています。チェーンの動きを計算して繋いでいる箇所とそこから生まれるチェーンの自然な流れを絶妙に組み合わせて、下の画像のようなとても美しく優雅なフォルムを生み出しています。身につけた時の身体に沿う感じは自然なのに、存在感のあるラインが印象的です。


「drawing」シリーズの中の “Soft Lines” その他の作品は、http://naokoogawa.com よりご覧いただけます。

また、「Naoko Ogawa」さんのジュエリーは、恵比寿のgallery deux poissons(ギャラリードゥポワソン)で取り扱いがあります。
http://www.deuxpoissons.com/artists/lmn/naoko/naoko.html

チェーンはパーツの1つ、または脇役として捉えれることが多いアイテムですが、手持ちのペンダントトップのチェーンを付け替えてみた り、チェーンを重ねて着けることで、また違った楽しみかたもできます。改めて意識を向けて見るとなかなか面白いかと思います。




Fumie Sasaki

佐々木史恵 Sasaki Fumie

東京藝術大学大学院 美術研究科 工芸専攻 彫金 修了。卒業後、学校法人 水野学園 ジュエリーコース・シューズメーカーコース・バッグメーカーコースにてシニアコースディレクターを務め、2005年Sandberg Instituut/Amsterdamに交換留学生として在籍。現在は、東京藝術大学 彫金研究室勤務。ジュエリーブランド「jaren /ヤーレン」主催。

jaren HP | http://jaren.info

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