受け継いだ熟練の技と、天然石へのあこがれ oro di oco

oro di oco デザイナーの松本孝子さんにインタビューした。

JJ:
はじめまして。今日はよろしくお願いします。今日は、インタビューのためにアトリエのある山梨からわざわざいらしていただいて、ありがとうございます!

松本:
はじめまして。いえいえ、よろしくお願いします。

JJ:
早速ですが、ジュエリーをつくることになった経緯を教えてください。

松本:
そうですね、、昔から絵を描いたりものをつくったりするのはすきで。そこがスタートですね。

JJ:
ジュエリー方面に本格的に進まれようとしたのは、いつごろだったのでしょうか?

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松本:
実は、家が宝飾店を営んでいたんです。なので、子どもの頃から当たり前のように宝石やジュエリーがあって。ものづくりが好きで進学していくうちに、やっぱりそっちの方向に・・・っていうのがありました。祖父が宝飾の職人だったり。

JJ:
では、3代に渡って・・・にいつの間にかなっていたという感じなんですね。素敵!

松本:
短大で彫金を学んで、そこからいろいろ見ていくうちに、やっぱりもっと学んでみたいという気になって、山梨の専門学校に進みました。それから十数年、山梨在住です。

JJ:
では、もうかなり早い段階でやっぱりジュエリーに辿りついていたんですね。

松本:
そうですね。実は短大時代にギャラリーに通ったりしていたころに出会った憧れの作家さんがいて、その方が行きたいと思った専門学校の先生をされていたりし て。その先生を師に、彫金、石の加工、鑑定など、一気にのめりこみました。卒業後、就職して職人になって。最初の2-3ヶ月は指輪を磨いたりしてたんです が、突然師匠に「これやってみろ」って大きなエメラルドを渡されて。

JJ:
!!

松本:
もちろんそれは、まわりに熟練の職人さんの目がある環境だからできたことなんですが、今思えばそこからかなりの高級な石でジュエリーの制作をさせてもらいました。10年くらい、、ですかね。

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JJ:
なるほど。かなりしっかり、宝石と向かい合ってこられた、と。ご自分のブランドを立ち上げることになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

松本:
実は、職人としてのキャリアの最初の方で、ETSUKO SONOBEの薗部さんのジュエリーの制作のお手伝いをさせていただいて。薗部さんのデザインは、普段制作しているそれとはまったくちがったデザインの感性のものが多くて、それがまた制作してみるとすごくよくわかるんです。

JJ:
薗部さん、以前インタビューさせていただいたのですが(インタビュー記事はコチラ)、徹底して筋の通ったデザインをされていますもんね。

松本:
そうなんです。それが、実際作るとやっぱりここはこの厚みじゃないとだめなんだとか、わかることがあって。お仕事させていただくたびに、感化されました。同時に、いつもの宝飾の方の制作に戻ると、オーソドックスな作業を違った目で見られて、また面白みが増しましたしね。

JJ:
薗部さんの作品との出会いは、かなりのきっかけになったわけですね。ご自分でブランドをはじめられて、大切にされていることは何でしょうか?

松本
そうですね・・・同じものをいくつも、は、つくりたくないという想いがあって。石もひとつひとつ違うし、金属の部分もひとつひとつが表現なので、少しずつ違う方がいいなと思っています。

JJ:
世界にひとつしかないっていうのは、身につける方としてもうれしいです。

松本:
私がつくるときにその方が楽しいっていうのもあるんですけど笑。

JJ:
なるほど笑。カラフルな石を使ったジュエリーが多いのもoro di oco さんならではですよね。

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松本:
そうですね、色のある石をたくさん使っている分、好みが分かれるようで誰にでも選んでいただけるとは限らないんですが、これだ!と出会ってもらえた方には、身につけると楽しい気持ちになるジュエリーであってほしいと思ってつくっています。

JJ:
ジュエリーを作る際の創造性のために、何かされていたりしますか?自然を見る、とか、デザインソースを集める、とか。

松本
いろんなものをとにかくたくさん見ますね。デザインされているものも、好きなものだけでなくて、嫌いだなと思うものも積極的に見るようにしているかもしれないです。それで気がつくことを大切にしています。

JJ:
嫌いなものを見ると、すきなものの輪郭も際立ちますよね。そして、学んだもののおかげで偏らずにフラットなデザインにつながるというか。

松本:
そうなんです。自分が手を動かすときも、偏った技術ばっかり使いたくないって思います。そうやって日々見ているものが、ふっと頭の中に形になってイメージ が湧いてきたら、絵を描いたり手を動かしたりして、形にしてみます。形にしてみたら、イメージとなんか違う!ってこともあるんですけど。

JJ:
作曲する人が、イメージ湧いたんだけどギター持ったらなんか違う曲になっちゃったっていうのと同じ現象でしょうか。手が慣れている方に動いちゃうことも、松本さんの場合あるのかもしれませんね。

松本:
そうなんです。なので、イメージ通りのものになるまで作り続けて、できたら自分でつけてみて、使ってみて、完成に近づけていく感じです。

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松本:
このネックレスなんかは、最初に石を買い付けてきたんですけど、もう飴にしか見えなくなってきちゃって。それで、ドロップがこぼれてネックレスになっているデザインになってます。

JJ:
そう言われると、、もうドロップにしか見えません笑。

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松本:
これは、牛乳パックからこぼれてるネックレスなんですが、紙の質感が出るようにと思って1枚板からひとつひとつつくってます。牛乳パックの中に、留め具が隠れています。

JJ:
こちらのピアスも、きらきら、こぼれてます。

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松本:
このピアスは、粒がサファイアなんですけど、固い石だからこそできるデザインで。

JJ:
それぞれの素材の個性を拾い上げて、ジュエリーとしてのつくりを大前提として、日々気になったことから生まれてきたイメージを実現しようとつくっていらっしゃるのがよくわかりました。幅広い制作の経験があるからこその作り方ですね。

松本:
そうなんでしょうか・・自分ではよくわからないんですが笑。そういえば、先日、ジュエリーマスター制度というのがあるんですが、女性で初めて上級に合格しました!

JJ:
やっぱりすごいじゃないですか!!!笑。腕につけられている時計も、素敵ですね。

松本:
ありがとうございます。これ、時計自体は祖母から受け継いだものなんですけど、形見として最近アームを作り直したんです。

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JJ:
ジュエリーって、そういう風に受け継いだり、作り直したりできるのが素敵ですよね。想いのこもったジュエリーほど、大切にされている方もいて、でも自分が つけられる雰囲気と違うから・・・と仕舞い込んでいる方も多いだろうから、リメイクの相談されたい方もいるんじゃないでしょうか。

松本:
そうかもしれないですね。そんなこともできたらいいな、と思って準備しています。それから、截金の絵を描いてるんですが、それをジュエリーデザインに落とし込みたいとも思ってるんですよね・・・

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JJ:
金箔を使った截金のジュエリー・・・それはまた楽しみですね。是非拝見したいです!

淡々と、でもとても楽しそうにジュエリーについてお話を聞かせてくださった松本さん。実は、ご実家の宝飾店はご両親で6代目だそう。ジュエリーの道に自然に進まれ、没頭され心から魅了されていながら、ジュエリーの存在をつける方と一緒に楽しんでいらっしゃる姿がとても印象的でした。

interviewed by Midorikawa Hiromi

oro di oco:http://orodioco.jimdo.com/


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