スペインの老舗ジュエラー《Unión Suiza(ユニオン・スイザ)》が手がけるオリジナルブランド、MISUI。世界で活躍するクリエイターとコラボして生まれる革新的でいて芸術的なジュエリーに誰もが魅せられるはず。誕生秘話や日本での展開などについて、ディレクターのJoan Gomis(ジョアン・ゴミス)さんに語っていただきました。
JJ:
MISUIは、スペイン・バルセロナの老舗ジュエラー「ユニオン・スイザ」が立ち上げたオリジナルブランドですが、いつ、なぜ立ち上げたのでしょうか?
Joan Gomis :
MISUIのオーナーであるVendrell(ヴェンドレル)一族は、6世代に渡り宝飾と時計を扱う店として、バルセロナの歴史を紐解くうえでも一目置かれている存在です。1840年、Jaume Vendrell(ジャウメ・ヴェンドレル)が「ユニオン・スイザ」の1号店をオープンし、それから今日に至るまでバルセロナやマドリードなどのスペインだけでなく、ヨーロッパでも注目されるようになりました。
2015年に創業175年を祝い、「ユニオン・スイザ」が現代のライフスタイルにより欠かせない存在になるように、革新的なプロジェクトとして、いつまでも後世に語り継がれるような、ハイエンドなオリジナルブランドを立ち上げようということで誕生したのがMISUIです。
JJ:
ブランド名の由来は?
Joan Gomis :
いくつかの意味が含まれています。覚えやすさはもちろん、感情的な繋がりを持つ言葉で、なおかつインターナショナルに通じる必要性もありました。
MISUIという名前は”私だけの親密な世界”を表しています。最初の2文字「MI」は”私の(my)”を意味し、後に続く「SUI」は尊敬の気持ちを込め、「ユニオン・スイザ」の名前の一部からとりました。ヴェンドレル一族を思いながら、私たちのジュエリーを手にしたお客様との親密な関係性が生まれますように、と。そんな願いが込められています。
JJ:
ブランドのコンセプトを教えてください。
Joan Gomis :
ジュエリーの新しい流れを提案したく、ジェエリーアーティストがキュレーターとなり、世界で活躍するデザイナーに制作を依頼し、コレクションを構成していくスタイルをとっています。
そうやってハイエンドなジュエリーシーンを盛り上げていきたいです。それぞれのコレクションはデザイナーの世界観や感性を生かしつつも、ストイックに、かつプロフェッショナルな姿勢を感じられるつくりを心がけています。ですので、デザインや生産といったつくりの面だけでなく、ハイエンドなジュエリーだからこそ表現できる、物の背景を感じられるようなクリエーションの面でも私たちはこだわりを持っています。
JJ:
MISUIのデザイナーを選ぶ基準とは? 選ばれたデザイナーたちの共通点はありますか? 例えば、全員スペイン人ですか?
Joan Gomis :
MISUIのクリエイティブディレクターで、先ほどのコンセプトの質問で触れたキュレーターも兼ねたジュエリーアーティストの Marc Monzó(マーク・モンゾ)氏と一緒にデザイナーを選んでいます。私たちとじっくり向き合い、MISUIの魅力を最大限に引き出してくれるかどうか。また、新しいコレクションと今あるコレクションの相互関係を考えながら、足りないところは補完し合い、相乗効果をもたらすデザインを生み出せるかどうか。なおかつ、アートの面において、商業的な面においても、これまでにない多様的な物や事を発信できるかどうか。選ぶ基準では、それらが重要になってきます。
選ばれたデザイナーは全員がスペイン人ではありません。彼らは共通して、MISUI自体を豊かなブランドにできる十分な発信力を持ち、それに対して自分の言葉もちゃんと持っているところですね。
JJ:
マーク・モンゾさんはスペイン出身のジュエリーアーティストで、日本でも人気があります。MISUIにとって、彼の魅力とは?
Joan Gomis :
マーク・モンゾ氏はMISUIのクリエイティブディレクターでありながら、MISUIの筆頭デザイナーでもあり、私たちにとって欠かせない人物です。また、彼は長きに渡ってインターナショナルな活動を行うジュエリーアーティストでもあります。最近、そんな彼の功績をたたえ、ヨーロッパのコンテンポラリージュエリー界では最も栄誉のある「フランソワーズ・ヴァン・デン・ボッシュ賞」を受賞しました。
マークの作品はほとんどが小さく、クラシカルで普遍的な形をしていますが、様々な万物から刺激を受けて生まれた豊かな創造力と精巧なつくりが魅力です。
加えて様々なメッセージを秘めていて、余計な装飾を削ぎ落とした要素もあるので、デザインや制作の途中でも彼の作品は輝きを放っています。MISUIのジュエリーにおいても同じような輝きを放ち、本質をとらえながらポエティックな世界へと私たちをいざなってくれます。
JJ:
コレクションはいくつありますか?
Joan Gomis :
8つのコレクションの他に、ユニークな作品を提案する別シリーズの「ONE OF KIND」があります。各コレクションには明確な提案や具体的なアイディアがあり、一人のデザイナーが一つのコレクションを構成していくといった、ブランドのコンセプトに基づいたスタイルをとっています。そうすることで、デザイナーは常にMISUIの世界にブレることなく繋がれることができると思うからです。
JJ:
日本進出を決めた理由は?
Joan Gomis :
日本進出は私たちにとってごく自然な流れでした。趣向や価値観、美意識がスペインと似ていて、実際、スペインのカタルーニャと日本の間には特別な関係性があり、ジャポニスムと呼ばれる現代の芸術様式がカタルーニャに存在し、地元アーティストたちの間で影響を与えています。ガウディとスペインのモデルニスモ(モダンアート)は日本人によって世界的に広まりました。そういった理由も含めて、ミニマルでコンテンポラリーなジュエリーを提案するMISUIを受け入れてくれるマーケットは限られていますが、私たちは常に日本のことを考えています。
JJ:
日本のジュエリーマーケットについて感じることは? それを踏まえてうえで日本ではどんなジュエリーを展開しますか?
Joan Gomis :
世界的に見ても日本のジュエリーマーケットはものすごく特殊です。ジュエリー業界の専門家もエンドユーザーも、ユニークな視点を持っています。ディテールを注意深くチェックし、評価や分析が鋭い。ですので海外ブランドにとって難しいマーケットではありますが、私たちにとっては良い効果をもたらしてくれます。MISUIが提案するユニークなアプローチや価値観を理解してもらうためには、そういった厳しい批評がとても参考になるからです。
日本ではMISUIのいくつかのコレクションを展開。パーソナルな存在としてのジュエリーを提案する私たちにとって、小さくて繊細な要素を好む日本のマーケットはすごく手応えがあると感じています。
JJ:
最後に、日本のお客様に向けてメッセージをお願いします。
Joan Gomis :
日本のお客様が持つ特別な感受性と視点は、MISUIの美意識と静謐さを理解してくれると思います。私たちのジュエリーがそろう伊勢丹新宿店にて、お待ちしております。みなさんの期待を裏切らないでしょう。
MISUI(ミスイ)
コレクションを手がけるデザイナーは、クリエイティブディレクターでもあるマーク・モンゾさんを筆頭に、Estela Guitartさん、Noon Passamaさん、Marta Boan(マルタ・ボーアン)さんなど、国際的な活躍で注目されている人たちで編成されています。
スペインの老舗ジュエラーが提案するコンテンポラリーなハイジュエリーに誰もが心奪われるはずです。
公式HP | https://www.misui.es
Text by Yoko Yagi