2024年1月19日(金)〜4月15日(月)の間、六本木 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3 にて「ダニエル・ブラッシュ展 – モネをめぐる金工芸」が開催されています。
ダニエル・ブラッシュにオマージュを捧げる日本で初の美術展
現代アメリカの偉大なアーティストであり、金細工職人、画家、彫刻家、哲学者、エンジニア、そして謎に満ちたダニエル・ブラッシュ。「ダニエル・ブラッシュ展 ― モネをめぐる金工芸」は、ダニエル・ブラッシュの卓越した作品を日本において初めて紹介する美術展です。
これは、2017年にレコール パリ本校で企画された初の展覧会「Cuffs & Necks(カフス&ネックス)」展、2018年にニューヨークで開催された同展、さらに2023年に香港のレコール アジアパシフィックで開催された「DANIEL BRUSH AN EDIFYING JOURNEY(ダニエル・ブラッシュ 啓発の旅)」展に続くもので、ダニエル・ブラッシュにオマージュを捧げるこの類を見ない展覧会となります。
ダニエル・ブラッシュの表現方法と連作に焦点を当てた2章構成
アルミニウム、スチール、ゴールド、絵画。エキシビションの第1章では、ジュエリーから芸術作品、オブジェまで、ダニエル・ブラッシュの幅広い作品の中に見られる、伝統的な芸術のカテゴリーを超えた多様な素材や表現方法が紹介されます。
続く第2章では、ブラッシュの連作「モネについて考える」にハイライトを当て、素材の特性を活かして卓越した極めて優美なオブジェを生み出す彼の類いまれな能力を探ります。
ブラッシュの連作「モネについて考える THINKING ABOUT MONET」
ダニエル・ブラッシュは、アーティストとしてフランス印象派の画家が使う色彩、とりわけモネの淡いピンク、セルリアンブルー、カドミウムイエローといった光を取り入れた色相につねに興味をそそられていました。
自身の興味の対象について深く調査・研究する必要を感じたブラッシュは、妻のオリヴィアとともにヨーロッパに赴き、このきわめて特殊な色遣いを理解することに焦点を当てて旅を重ねますが、モネを受け入れようとすればするほど、”反発”を感じてしまいました。その理由は、彼が油絵具を嫌悪していたからです。
探索の旅の途中、ジヴェルニー近郊の野原に置かれた実際の積みわらを見に行った時に、ダニエルの嫌悪感は確信となります。「古典的なグレーズ技法を駆使しても、私たちが野原に見に行ったあの実際の積みわらを包んでいた自然光の荘厳さは絵画から感じられなかった」と彼は言っています。
マンハッタンのスタジオに戻ったある日、まったく偶然ながら、友人のアートコレクターが訪ねてきて、最近手に入れたばかりのモネの絵のエイト・バイ・テン(8×10インチ)のカラーポジ・フィルムを二人に見せました。透明なポジ・フィルムを光にかざして見たその瞬間、モネの”考えていたこと”に惚れ込んでしまったとブラッシュは言います。「透過する光に輝く透かし絵として見たら、モネの作品が好きになった」と。ダニエル・ブラッシュは、そこに光を見たのです。
それ以来、ブラッシュは光で描こうと決意しました。光こそが、ブラッシュにとって永遠の、そして最大の関心事のひとつでした。
光の本質と科学、意味、光が生み出す反応、宝石の原石の中の光、スチールやアルミニウムからブラッシュが独特の手法で引き出すことのできた光、そして彼の彫刻が生み出す光のドラマ。それは黄金の輝きであり、太陽の輝きであり、神の光でした。ダニエル・ブラッシュのジュエリーを初めて見た人の眼の輝きでした。
ブラッシュが熱烈に信じていたように、ひとつの宝飾品が伝えうる精神の晴れやかさでもあると思います。そして、それはまたウィットとユーモアの軽やかさであり、ブラッシュの作品のなかに金色の一筋の糸のように流れ続ける子どものように無邪気な喜びであり、また彼の知性が主導する思考や混沌が有する哲学的な深遠さとは対照的なものでした。
どのように光が屈折するのか、回折線格子を使用した場合に、インチごとに機械的に分割された数千の線によってどのように光が反射するのかを目にしたとき、ブラッシュは学生時代の物理学の授業を思い出しました。そして、ジュエリーや宝石の魅力を感じる 最も強力な2つの要因、「色」と「光」の完璧なマリアージュについて考えるようになりました。
光線をさまざまな色として人の目に映る波長に分割する回折格子の科学的原理にインスピレーションを受けたブラッシュは、手彫りによる一連の彫刻作品の制作を始めます。
これらの作品は、いくつもの線を使って非常に繊細に、光を分割する特定の角度で綿密に彫られているため、油彩や水彩など、光以外の色素では作り出せない、あたたかく、深く、情緒に訴える色彩を見る人の目に映し出します。
そうしたブラッシュの光と色への愛着が明確に示されている「モネについて考える」シリーズには、彼と日本や日本芸術との強い関係も現れています。19世紀末に流行したジャポニスムを思い起こさせますが、この潮流は印象派の形成に大きな役割を果たしました。印象派の芸術家たちは日本の浮世絵の木版画の芸術性から啓示を受け、浮世絵の様式性と構図は彼らに強力な影響を及ぼしました。浮世絵をコレクションしていたモネもその1人です。
ダニエル・ブラッシュは、芸術とジュエリーの関係性について熟考し、これに挑戦しています。同時に、芸術とジュエリーの関係性を新たなレベルの啓示、メッセージ、意義、感情的影響に引き上げ、そのすべてを「モネについて考える」シリーズで具現化しました。
素材の詩人であり、金属加工職人であり、宝飾職人、哲学者、エンジニア、画家、そして彫刻家でもある現代アメリカのアーティスト、 ダニエル・ブラッシュにオマージュを捧げるこの類を見ない展覧会は、4月15日(月)まで開催予定です。
ダニエル・ブラッシュ展 – モネをめぐる金工芸
日時:2024.1.19 fri. – 4.15 mon. 10:00-19:00
休館日:3.11 mon.
場所:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3
住所:東京都港区赤坂9-7-6
URL:https://www.lecolevancleefarpels.com/jp/ja/exhibition/daniel-brush-thinking-about-monet
お問い合わせ:0120-50-2895 レコール事務局
主催:レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校
※入場無料/予約不要