伝統の技、職人の技巧が宿るジュエリー特集 – 前編

ジュエリーという小さな小さなピースは、デザイナーの想いとクリエイティビティが詰まったアートのようで、着用するのはもちろん、眺めているだけでもその深い世界観に魅入られることがあります。

その想いやイメージを伝えるためのデザインはもちろんですが、それを具現化するために、デザイナーは様々な技法を模索し、時に匠とも呼ばれる職人と手を取り合い、大切なピースを完成させます。

今回の特集では、日本のみならず世界の土地に根付き、長い年月に渡り大切に伝えられてきた伝統技術や、その技を持つ職人の技巧を駆使したジュエリーに焦点を当てました。

思わず語りたくなるような背景をもつジュエリーは、ご自分にはもちろんですが、大切な方へのギフトとして選ぶ際にも参考にしていただければ幸いです。


螺鈿の技術とモダンなデザインが融合する《SIRI SIRI》のバングル

コンテンポラリーなデザインとナチュラルなマテリアル、日本の職人技術との意外な組み合わせによるジュエリーを発信する《SIRI SIRI(シリシリ)》による螺鈿の技術が光るバングル。蒔絵作家による伝統的な螺鈿の技術とモダンなデザインを組み合わせた一品です。

螺鈿とは、夜光貝や鮑貝、蝶貝などを木地や漆地に1枚1枚埋め込むか貼り付けて装飾する技法のこと。通常は細かく切った貝を使って柄や模様を表現するところ、《SIRI SIRI(シリシリ)》では大胆に1枚にカットした貝を用いて素材そのものの美しさを活かしています。

薄さ0.1ミリ以下の貝シートの背面に独自に配合した白漆を塗装。清涼感あるブルーグレーは日常使いできるシンプルさがありながらも、繊細で上品な魅力が楽しめます。《SIRI SIRI(シリシリ)》のデザイナーが螺鈿の技術に惹かれ、蒔絵作家・松田祥幹氏との出会いにより作品制作となりました。

CINEMA JAPONESQUE Bangle Hindwing ¥57,200 | https://sirisiri.jp/products/cinema-japonesque-bangle-hindwing 


《Shelby Aki》による甲州貴石切子とのコラボレーションリング

2017年誕生と同時に注目を浴び、《Shelby Aki(シェルビーアキ.)》の定番コレクションとなった「KIRIKO Precious Stone」は、 天然石に日本の伝統的な細工「切子」を施した甲州貴石切子をこだわりのデザインとセッティングで仕立てたコラボレーションジュエリーです。
 
日本を代表する二人の宝石研磨士がお互いのスピリットを尊重しつつ、最大限に美しさを引き出し合うことから生まれる「甲州貴石切子」は、万華鏡のように幻想的な効果を引き出すオモテ面のカットを「現代の名工」清水幸雄氏(2016年の黄綬褒章を受章)が、裏面(底面)の切子のカットを一級宝石研磨士で伝統工芸士でもある深澤陽一氏が担当しています。

個体差のある天然石の加工は非常に高度な技術が必要なため、熟練の二人でも神経を使いながらの大変難しい作業ですが、いくつもの工程を全て手作業で仕上げています。

また、裏面からも細工がされている「甲州貴石切子」は割れやすく、非常に高度なセッティングの技術を要します。枠のみのセッティングは、シャープさと一体感を生み、底から入る光はオモテ面の立体感を際立たせるためのデザイン。アームにもこだわったリングは、少しエッジの効いたロックカット入りのアシンメトリーなデザイン、切子の輝きをリフレインさせたランダムカットデザインが使われています。シンプルで研ぎ澄まされたデザインには、多くの職人たちの技がつまっています。
  
こちらは、水晶の中でも無色透明で高品質の美しい原石を使ったクリアクォーツのリング。華やかに切子の細工が際立ちます。

KIRIKO / Rock Crystal Ring (Rectangle / R151-CQ) ¥286,000 | https://www.shelby8.com/items/35247202


黒漆・白漆・乾漆の3種の漆が織りなす《INHIRENT:PATTERN》の自然の世界

「木」という素材を改めて見直し、身に着けることで日常から木をより身近に感じてほしいという思いでアクセサリーを生み出す《INHIRENT:PATTERN(インヒレント:パターン)》。

広葉樹の一種である漆の木から採取された漆との出会いから生まれたURUSHIコレクションは、独自加工の木部を、黒漆・白漆・乾漆の3種の漆を伝統的な工法で塗師・牧野俊之氏により。側面と裏面に丁寧に塗布し生み出されています。

INHIRENT:PATTERN(インヒレント:パターン)》は今年、世界三大デザイン賞の一つとして国際的に権威のある iF DESIGN AWARD 2022を受賞。約11,000件の応募の中からプロダクト分野において高い評価を得ています。

DD:WW Ring sizeM gradation / URUSHI \ ¥31,900|https://inherent-pattern.katalok.ooo/ja/items/60104
製作協力:若林佛具製作所(京都)


《Curva y Ruri JEWELRY》山梨の伝統技法・手擦りとジュエリー職人の技

自然が作り出した模様や内包物を有した天然石を職人が指先の感覚を頼りに、時にはダイナミックに切り込み、時にはさりげなく整える事で、石の持つ様々な表情を引き出す山梨・甲府の伝統技術「手磨り」。

Curva y Ruri JEWELRY(クルバ イ ルリ ジュエリー)》では、宝石研磨職人・大城かん奈氏と共に原石選びから色彩を描くようにイメージをし、インクルージョンの配置に拘り、風景を切り取るかのように手磨りでの宝石研磨を施しています。

研磨された石は、ジュエリー職人の手により、実物のレースに近い質感や厚みで地金に鋳造した繊細なレースを手巻きした石枠で仕立て、ジュエリーとして昇華。年月をかけ磨き、特別な時間を纏う職人技術が触れることで生まれる作品づくりを通し、工芸の魅力を肌で感じる作品づくりを心掛けています。

matiz / ルチルクォーツ・デュモルチェライトインクォーツ K10WG TOP ¥167,200 / K10YGチェーン(70センチ) ¥33,000 / K18YGチェーン(70センチ) ¥57,200 | Curva Salon:03-3725-2119 / maiko@curva-m.com までお問い合わせください。


 

ジュエリーという小さな世界に詰まった、長い歴史とそれにより大切に紡がれてきた伝統。

その背景を深掘りする機会はあまりないかもしれませんが、このように伺ってみると、改めて完成までにどれだけの技術とセンスが掛け合わされ、創り上げられているかに脱帽させられます。

「伝統の技、職人の技巧が宿るジュエリー特集 – 後編」は甲府の伝統工芸士による宝石彫刻や、はめ込み細工の技法を取り入れたアートのようなジュエリーをご紹介します。



from_editors

JEWELRY JOURNALのエディターが、テーマを決めて綴る特集記事やシーズンを感じるジュエリーの話題などの最新情報をお届けするジャーナルです。

Don't Miss