日本の工芸技術や美意識をベースにコンテンポラリーなジュエリーを展開する、SIRI SIRI。JEWELRY JOURNAL 初登場にあたり、ブランドの出で立ちやそのクリエーションなど、デザイナーの岡本菜穂さんに伺った。こちらは前編です。
JJ:
今日はよろしくお願いします!岡本さんはJJに登場するブランドの中でも取り分けインタビューや取材を受けられていることが多いような気がするので、初めてのお客様はもちろん、ファンの方からも喜んでもらえるJJにしかできないインタビューを目指したいと思います。
岡本:
笑。よろしくお願いします。
ごく自然な考えから出会った伝統工芸
JJ:
早速ですが、SIRI SIRI といえば、切子硝子のシリーズを一番に思い浮かべる方も多いかと思います。
岡本:
はい、定番として人気のあるアイテムです。これは、以前からあるKIRIKO Bangleを細くしたSLIM・・・新作として登場します。
JJ:
このバングル、個人的にSIRI SIRIのアイコン的存在だと思っているんですが・・・この造形がアイコンとなると、よく「伝統工芸」とか「コンテンポラリーデザイン」というカテゴリーでのみで括られたり、そのアウトプットばかりフィーチャーされているような気がしていて。そういうことじゃないよなと、今日は思って話を伺いに来ました。
岡本:
そうですね。例えばこの切子硝子のシリーズをとっても、私の中では、自分自身東京で活動しているのだから、東京に意味があって存在している工房や技術を使うというのは自然な考えなんですよね。結果として、伝統工芸だった。 一方で、自分は日本人だから、日本の素晴らしい技術や美意識で世界に勝負したいと言う気持ちもあるんですが。
JJ:
そうですよね。岡本さんの思考は、まさに”Think globally, Act locally”を地でいっていて素晴らしいと思うんですが。そのふたつのシンプルな思想が絡み合って自然に出来たものであって、「日本を世界に伝えるためには伝統工芸」「だから伝統工芸の技術を使ったジュエリー」じゃないんですよね。
岡本:
そうですね。SIRI SIRIとしては、デザインに向かう姿勢だったり、モノづくりの背景も踏まえた上で選んでいただけたら嬉しいと思います。
JJ:
岡本さんはジュエリーをデザインするとき、どんな風に発想されますか?
岡本:
日々生活の中で思いついたらメモ、ですね。でもネタ帳みたいにメモのストックはしないです。思いついて書き留めたメモを持ち帰って、それを展開するにはどうしたらいいかたくさん絵を描いて、うまくいったら清書して、、その状態から、精査されていって、数回清書されて、コレクションとして出すことになるのは、一握りです。それから、図面と簡単な模型持って職人さんのところに行って、更にものづくりを深めていきます。
本能的に「装飾」がすき
JJ:
つくろう!と思ってでなく自然に発想するあたりが、生活の中につながっているデザインの在り方ということなんでしょうか。例えば、「きれいだと感じたお花をモチーフに」、というようなものはないですよね。
岡本:
自分にとっては、ジュエリーは、身につけるものなので、身体と機能に準じていて、着想のヒントになるのは構造が多いかな。
JJ:
感覚でも、素材でも、言語でもなく・・・構造!やはりアートというカテゴリーではなく、どちらかというとインテリアデザインに近い感じですね、ドアノブとか。
岡本:
そうそう、近いです。元々、父が建築家で、晩年になって絵描きになった人で、若い頃から自然とおそらく父と比較をしていたんだと思うんですが、自分は何が得意か、わかっていたんですよね。得意ジャンルは、半立体だったんです。その流れで、学生時代はインテリアデザインを学んでいました。でも、インテリアをデザインするのをやってみたら全然楽しくなかったんですよ。インテリア自体は好きなんですけど。身につけるものの方が、ずっと楽しかった。
JJ:
全然楽しくなかったんですか!
岡本:
そう笑。どうやら、私は「装飾」が好きみたいなんです、本能的に。インテリアは形が構造になっていたりして美しいけど、機能があって役に立つものであって、「装飾」じゃないじゃないですか。
JJ:
なるほど、装飾が好き、と。テイストとしてデコラティブな雰囲気が好みじゃないってだけで、存在としては装飾なんですね。デザインの仕方はインテリアだけど、哲学としてはファッションなんだ!着飾ることは無意味だけど、楽しい。
岡本:
そうですね。つけてなくても直接生きるとか死ぬに関係ないもの、なくても不便がないもの。でもつけたい。現代的になっていくと、効率を求めるのか装飾は無くなっていくんです。でも、プリミティブ・・・原始的にジャングルで生活しているような種族なんか、自然に近くなればなるほど、装飾品は大きくなっていきます。不思議ですよね。
JJ:
確かに!本能としては、飾らないといけないんですね、きっと。遺伝子を残すための自己表現なんですかね・・・?面白い。そういう意味で、SIRI SIRI は現代の中でプリミティブな本能を呼び起こすことに取り組んでいるともいえるブランドなんではないでしょうか。
“女性の中に必ずある風景”をジュエリーに
JJ:
さて、そうやって2006年にスタートされこれまで歩まれてきたSIRI SIRIを、ブランドがスタートして間もなくから取り扱われているお店で、イベントがあるとか。
岡本:
はい、そうなんです。GALERIE VIE(ギャルリー・ヴィー)の30周年を記念して、新作をあわせて先行で発表させていたきます。
JJ:
以前も、SIRI SIRI のバッグの展開や、籠バッグのファブリック部分の限定色バージョンの展開もされていましたよね。どの展示も、GALERIE VIEの世界に溶け込んだSIRI SIRI がまた新鮮でよかった!こちらも見逃せないですね・・・。
JJ:
これは・・・銀彩ですか?今回のコンセプトも聞かせてください。
岡本:
今回、記念アイテムのお話をいただいたときに、まず30周年ってすごいことだと思って、GALERIE VIE のカタログを取り寄せて拝見させていただいたんですよね。そうしたら、30年前と思えない、今と同じ世界観が広がっていて、それを感じたときに、女性の中に必ずある風景が見えたんです。リネンの素材感だったり、質のいいさりげないレース、仕立てのよいシャツ、、みたいな。そのイメージをそのまま表現しようと思ったんです。フォルムは時代に左右されない揺るぎないシンプルなもので、空気感にノスタルジーを込めて銀彩を纏わせました。
JJ:
SIRI SIRI としても、これまでになかったのが不思議なくらい馴染む雰囲気で、でも「シルバー」というのは新鮮ですね(※カラーはシルバーですが、
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SIRI SIRI のクリエーションに対する真っ直ぐな姿勢を深めていくと、あっという間に時が過ぎ・・・後半では、デザインの哲学・マリッジリングのラインについてなど伺います。8月27日公開予定です。
SIRI SIRI のジュエリーは、アトリエショップおよび下記JJ内アーティストページに掲載されている取り扱い店舗にてご覧いただけます。
このインタビューは前・後編の前編です。後半はこちらからご覧ください。
interviewd by Hiromi Midorikawa
photo by Yuka Yanazume
SIRI SIRI:http://sirisiri.jp/
Jewelry Journal Artist Page:http://www.jewelryjournal.jp/brand/sirisiri/