コンテンポラリージュエリーことはじめ 「リサ・ウォーカー」(前編)

コンテンポラリージュエリーという言葉を聞いたことがあるでしょうか。

アートジュエリーの名でも知られ、ファインジュエリーやコスチュームジュエリーとは別の、ギャラリーで扱われることの多い作品性の高いジュエリーです。海外ではスタジオジュエリーやオーサージュエリー(オーサー=作家、作品)とも呼ばれることからも、作家性の高さを重視する姿勢がうかがえます。

この連載では、そんなコンテンポラリージュエリーの世界で活躍する作家さんを少しずつ紹介していきます。

最初に紹介したいのは、リサ・ウォーカーさん。リサさんは、ニュージーランド出身で、地元とドイツの学校でジュエリーを学びました。卒業後およそ8年間にわたってドイツに残り、アーティストとしての活動を続けましたが、2010年に地元のニュージーランドに戻り、国内外の数多くの展覧会に参加しています。

今年、彼女の地元、ニュージーランドのウェリントンにある国立博物館、テ・パパ・トンガレワで、彼女の30年にわたるキャリアを振り返る「Lisa Walker: I want to go to my bedroom but I can’t be bothered」が開催されました。キュレーターは、ジャスティン・オルセンさん。テ・パパ・トンガレワの装飾芸術とデザインを担当する学芸員です。

今回、実際にこの展覧会を訪れることができたので、展示風景とともに、リサ・ウォーカーさんとはどんな作品をつくっている作家さんなのかを見ていきましょう。

会場風景です。作品は入口から年代順に展示されていて、制作した時期と土地ごとにガラスケースに整理されていました。右手に見えるのは、大型のネックレス形の作品です。素材はテ・パパ・トンガレワの改装工事の時に撤去された床材で、制作に至った過程や制作中の思いがテキストでつづられています。

初期の作品群。このころは金属を使った作品ばかり制作していたそうです。

ミュンヘンで作られた作品群。金属以外のさまざまな素材が登場しはじめます。リサさんによれば、意図的にそうしたのではなく、自然とそうなっていったとのこと。

そして大ぶりな作品も作るようになります。

リサさんの身近な人たちが作品を身に着けたポートレートも展示されていました。

ここで紹介したのは、リサさんが30年にわたって作ってきた作品のうちのほんの一部でしかありません。それでも、リサさんの作品が、素材の面でも大きさの面でも、いかに型破りかをおわかりいただけたのではないでしょうか。

中には「えー! 手あたりしだいになんでもジュエリーにすればそれでいいの?!」と思った方もいるかもしれません。じっさいのところ、リサさんの作品を見て「なんでもあり」なだけじゃないか、と批判する人もいます。

これについては、彼女の作品にはありとあらゆる素材が使われているということを認めたうえで、リサさんの作品がジュエリーであるということにもっと目を向けてみませんか、と言いたいです。では、「ジュエリーである」とはどんなことを意味するのでしょうか。次回は、リサさんの作品を通して、その点について考えていきたいと思います。

Photo by 泉谷かおり


「Lisa Walker: I want to go to my bedroom but I can’t be bothered」
会期:2018.3.17 sun. – 7.22 sun.
会場:ニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワ
https://www.tepapa.govt.nz/

リサ・ウォーカー 公式ウェブサイト | http://www.lisawalker.de/


Makiko Akiyama

秋山真樹子 Makiko Akiyama

専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ コンテンポラリージュエリーコース卒。卒業後、同校での教職を経て翻訳・執筆業に転向。Art Jewelry Forumアンバサダープログラム日本代表。共著に『Spring/Summer 16_green gold』(Schmuck2編、2017)『Jiro Kamata: VOICES』(Arnoldsche Art Publishers、2019)がある。

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